私の初めてのノンフィクションです。自分からなにかに引っ張られるように書きたいと思ったのはこの作品が初めてです。
ノンフィクションですから燃料輸送に関わった方たちにお話を聞くのはもちろんですが、ディーゼル機関車の運転席に乗せてもらった時の殺風景さや燃料のにおい、鳴らさせてもらった警笛の大きな音。目に入る家々をおおうブルーシート。頻繁に起こる大きな余震、夜の磐越西線の駅で機関車の音を聞こうと待っていたときの空気の冷たさなど、その場に身を置いて五感で感じるひとつひとつのことが、原稿を書き上げる力になりました。その時のことを思い出すと今でもドキドキしてきます。
2013年に出版されて以来、デーデは今も多くの方に読んでいただいています。今年もラジオ、テレビ、ネットなどさまざまなメディアで取り上げていただいています。そのことに感謝するとともに、なぜだろう、とふと思います。
デーデはひたすら燃料を運びました。ほとんどの人が緊急燃料輸送のことは知らなかったとおもいますが、その燃料で多くの人が助かりました。
誰かのために何かをひたすらやり続けること――このことがデーデを通して多くの皆さんに伝わったのかもしれません。
けれども、わたしはこのことを伝えようと思って書いたわけではなく、あくまで事実を書いただけなのです。
ありがたいことに多くの感想をいただきました。その中に、忘れられない言葉があります。
「わたしもだれかのデーデになりたい」
今、わたしはだれかのデーデになっているのだろうか。自問する日々です。(すとうあさえ)
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